Yuki Hayashi

代表取締役CEO林 勇輝

自分が正しいと
信じる道を証明したい。

“語彙の人”である。林と一度でも会話を交わしたことがある方なら、皆そう思うはずだ。それまでの経験、知見、日々のインプットから繰り出される鮮やかで適切な言葉たち。共感獲得やコミュニケーションが成果を左右するインターネット広告の世界で組織のトップを張る林の面目躍如といえるだろう。しかしその林をもってしても「難しい作業だった」と言わしめるもの、それが自社理念をシンプルに進化させる再構築だった。
Profile

1982年11月14日 東京都葛飾区生まれ
【my favorite】
BIGIN / 沖縄 / マークハント / スノーボード / スキューバダイビング / サーフィン / サッカー / キャンプ

シンプルにすることが、いちばん難しい。

株式会社フォースリーを設立して、丸6年が経ちます。7年目を迎えるにあたって言っていることは同じつもりなのですがシンプルな言葉として定着できたミッションが「人の可能性を最大化する」。加えて「疑問を放置しない」「可能性を否定しない」「一人はチームのために」という3つのバリューです。ここまで本当に紆余曲折でした。いや、言葉はあふれていたんですよ。言いたいことは山ほどあった。だから長くしようと思えばいくらでも長くできる。でも、それじゃ機能しないんですよね。やはりシンプルなメッセージに凝縮しないと、人には伝わりづらい。だからこのミッションにたどり着くまで、ずっと考えていましたし、いろんなところで口にしてはきました。その積み重ねで、逆にシンプルに削ぎ落とすことが出来ました。

さて、ミッションが再構築できた。バリューもいい感じに落ち着いた。そこで次に意識していることが影響力をつけること。いま僕が何か言ったとしても、それに影響を受ける人って恐らく100人に満たない。それが例えば孫正義さんとか、サイバーの藤田さんなら何万人、何十万人に伝播させることができる。どんなにいいことを言っても影響力がなければ意味がないとつくづく思います。そのために規模や会社としての存在感をいかに高めていけるか。エンジニアを増員してプロダクトづくりに注力しているのも、その手段のひとつです。

少なくとも300年は続く文化をつくる。

今後の新規事業のプラン、やりたいことがたくさんありすぎて取捨選択しているところです。それぞれ小さな種を蒔きつつ、収益が見えてきたら事業会社を立ち上げてビジネスとして大きく伸ばす。一見すると一つひとつの取り組みは小さいかもしれません。でも、僕はそれよりも人生の時間は有限なのでチャレンジの数に重きを置いていてチャンスがあったらやらないことのほうが、実はリスクは大きいんじゃないかと思っています。あと僕、欲張りなんで事業をひとつに絞るなんてできない。なんでもやりたいタイプなんです。もちろんそういったチャレンジはあくまで事業会社でのこと。フォースリーに関していえば得意領域のアフィリエイトを中心とした広告サービス。この軸はブラしません。

もうひとつ、フォースリーでやろうとしていることがあります。それは、少なくとも300年は続く文化をつくること。当然、営利組織なので利益の追求はしますよ。でも、それだけじゃあまりにも虚しい。社会全体から認められる価値や存在意義を発揮するためにも、ある程度の耐用年数を誇る文化をつくりたい。そして自分たちが正しいと思っていることを証明していきたい。それこそが今回制定したミッション「人の可能性を最大化する」そのものなんです。

人生の可能性を狭めるのは、ちょっとした思考の癖。

たとえば世界のエリート層、名だたるIT企業の経営者やノーベル賞受賞者たち。彼らに共通するものはなにかと調べたときに感じたことなのですが、彼らはちょっとした疑問からも目をそらさずに疑問を放置しないで向きあっているのかなと感じました。多くの人はなんとなく疑問に思ったことでも、まいっかと放置してしまいます。あと多くの人はついつい日々何も考えずに同じことを繰り返す傾向にあります。そうすると思い出せない時間を多く過ごすので、ただ“時間だけが早く過ぎていく感覚”にとらわれる。物理的に流れている時間は平等で、本当はいろんなことに興味関心が持てたり、いろんなことができたのに、ちょっとした思考の癖で知らないうちに可能性を制限してしまっているのではないかと思っています。

あと、自分が経験するより他人が経験したことを先にインプットしたほうが時間短縮できますよね。人生の時間には限りがあります。毎日が回数券で、決して増えることはない。だったら時間短縮はやはり合理的。そのほうがたくさんいろんなことが経験できる。その選択肢がある状態で、それでもやらないという道を選ぶならまだいい。でもはじめから選択肢すら与えられないのは良くないですよね。こういった想いをミッションやバリューに落とし込めたことは、僕にとっても会社にとっても理想的なアウトプットに出来たかなと思っています。

1年前よりいまが楽しい、と感じられる自分に。

よく人を見ていて、いまやってることよりこっちの仕事やったほうが花開くんじゃないか、と思うことがあります。自分の中で常に本当はこうなんじゃないか?と様々なシチュエーションをシミュレーションする癖がついているみたいで、気が付けば勝手に頭の中でシュミレーションしていることがあります。メンバーのちょっとした変化、それこそ笑い声や挨拶、メールの文面などがきっかけになって。でも僕は超能力者じゃないんで、先のことがわかるとか、そんなものじゃないんですが、ただ共感はできる。そういう気持ちもわかるよと様々なみんなのシチュエーションに共感できるようにプラスのこともマイナスの事も常に様々な可能性を考えるようにしています。

それだけに、僕のことにも共感してくれる人が一人でも多くいると嬉しい(笑)。結局、人間ですから僕の欲求、こんなことやりたいという思いに共感してくれて、なおかつ所得という経済合理性が付与されていればお互いにオッケーだというのが基本的な考え方です。その上で仲間にも自分自身の可能性の最大化を図ってもらいたいですね。具体的にいえば歳をとってできることが増えた、1年前よりいまが楽しいって感じていけるような環境をこれからも作っていきたいと思います。

「人がいればその分だけ職業の能力がある」「ハテナを無くして寝てください」「事業は表現しているだけ」本文内にこそ出てこないがインタビュー中には数々の名言、至言が頻出した。ミッション・バリューの再構築という大きな仕事を終えた林のまなざしは、いますでに次の走路に向けられている。新しい期を迎えた株式会社フォースリー。その可能性はどこまで最大化されるのだろうか。夢は尽きない。 (取材・構成・文/早川博通 撮影/小野千明)