ステマ法でWeb広告はどうする?どうなる?弁護士に聞きました

2023.12.22
サービス

2023年10月に改正景品表示法が施行され、Web広告業界に大きな波紋を広げているいわゆる「ステマ規制」。
2023年12月現在はこの規制による行政指導等はまだ出ておらず、広告主・広告代理店各社は様子見を続けています。そこで今回は、弊社の提携先である薬機法医療法弁護士協会を設立した弁護士法人ネクスパート法律事務所代表の寺垣 俊介弁護士に法的な観点からのお話を伺いました。

INTERVIEW寺垣 俊介弁護士

ネクスパート法律事務所代表弁護士。健康食品の販売会社や病院・クリニックに対して適切な法律助言を行い、ひいては消費者に適切な薬務・医療の機会を提供することができる社会の構築を目指して2020年に薬機法医療法弁護士協会を設立。

INTERVIEWER高橋 隼

株式会社フォースリー サービス本部 LOGRIZa推進部 LOGRIZaチーム サブマネージャー。

ステマ規制は景表法を時代に合わせるアップデート


― 本日はよろしくお願いします。まずはご紹介も兼ねて、薬機法医療法弁護士協会様が取り組まれていることや現在、弊社フォースリーが事業提携させていただいている内容についてお伺いしたいと思います。

寺垣:御社の「LOGRIZa」というサービスですけれども、薬機法に限らず広告掲載面をチェックしてモニタリングしていく、というものですよね。それで蓄積されたデータに対して景表法・薬機法・医療法あたりについてチェックを行いまして、どういったものがNGであるのかとか、代替表現を監修しています。

― いつも大変助かっております!
お取組みの背景としては、弊社からの熱烈なアプローチでしたが、
元々、協会を設立された背景をお伺いできますでしょうか。

寺垣:背景としては、薬機法や医療法を取り扱っている弁護士って実は少なくて。今までは、法律ではあるのに、弁護士ではない方々がチェックしているケースもあったりと、弁護士があまり入って行かなかった領域なんですけど、本来はやはり弁護士がやるべき仕事だなっていうことに気が付いて。
ただやっぱり、単独の事務所でやるっていうよりは興味がある弁護士を集めて勉強会を開いたり、セミナーやったりとか情報公開したりとか、そういったことをしたいな、ということで設立をしました。
個人的には、4年程前に、薬機法に関する刑事事件を担当した経験も大きかったですね。

― なるほどですね。4年前と比較して、新たにそちらの領域に飛びつく事務所さんも増えているんじゃないでしょうか。

寺垣:そうですね。弁護士業界もそれぞれ特色を出していかないといけないので、その意味で薬機法をやっていますという人は増えていると思います。

― やはりそういった流れなんですね。
今回のテーマに関してはステマ法がちょうどタイムリーな話題なので、ステマ法に絞ってお話させていただければと思います。
改めて、2023年10月からステマに関する規制が施行されましたが、そもそもなぜこの規制ができたのかとか、そうした背景からかいつまんでお話いただければと思います。

寺垣:そうですね。昔は、消費者はテレビCMのようなマスメディアとアナログで消費活動をしていましたよね。そこから、Googleなど検索エンジンで検索して何がいいか選んで買うようになり、ここ数年はSNSを見て何を買うかを選ぶようになっています。実際、私の妻もどこに旅行に行こうかとかInstagramやTwitter(X)、YouTubeといったSNSで検索して調べたりしていますよ。
SNSにはもちろん広告主の公式アカウントというものもあるわけですけど、消費者は一般の人の口コミのほうが見たいわけです。
そこで広告主がお金やサンプル等の提供をして一般の人の口コミっぽい投稿をしてもらって、そこからの流入を狙っている、そしてこれが増えているということで問題になったのがステマですね。
この10月にようやく法規制が整ったわけですが、景表法ができた昭和の時代には、こんな時代になるとはもちろん想定されていませんでした。

インフルエンサーへのギフティングはOK?NG?


― アフィリエイトに関する検討会は以前からあって薬機法の改正につながったりしていましたが、昨年の9月にステマに関する検討会が始まって1年という期間で法規制が施行されることになったわけですよね。個人的にはけっこう動きが早かったなと思うんですが、どのようにお考えですか。

寺垣:立法に関わったことはないのでわからないんですけど、やはり社会的にステマが規制されないのがおかしいとはみんな思っていたということではないかと思います。

― 規制当局としては取り締まりの温度感は結構高いということですかね。とはいえその温度感のわりにはまだまだざっくりした規制だなという印象ではあります。

寺垣:明確な運用基準は示されていますね。まだ摘発事例はないですが。
運用基準で気になる箇所を少し読み上げますと、「『客観的な状況に基づき、第三者の表示内容について、事業者と第三者との間に第三者の自主的な意思による表示内容とは認められない関係性がある』かどうか」によって判断する、という文言がありまして、微妙な事案もけっこうあるんです。特にギフティングに多いですね。
ギフティングで商品を渡して「こう書いてください」という指示をしなければいいということになるんですけど、事実上タダで商品をもらって、さあ書いてくださいと言われたら普通良いことを書きますよね。それって「客観的な状況」としてどっちだろうというと微妙なところだなと思います。でも悪口を書くこともあるわけで、そうするとインフルエンサーの自主的な意思で書いているからステマには当たらない、口コミであるということになると。
この基準の中にある「客観的」がどこまでのことを言っているのか、等は限界事例(編注:規制が適用されるぎりぎりの事例)がないこともあって不明瞭な印象はありますね。

― インフルエンサーのギフティングの例が出ましたけど、広告主とインフルエンサーの間で金銭が発生しないケースもありますよね。「金銭が発生しているか」はひとつポイントになりそうでしょうか?

寺垣:そうですね、金銭が発生していてPR表記がなければこれはNGと言っていいと思います。ギフティングで、金銭が発生していなくて、内容にまったくタッチしなければセーフなんじゃないかと思いますが、なんやかんや内容には触れないことはできないと思います。ここは限界事例を待ちたいですね。

― 内容に全く触れないで依頼するのは無理ですよね。「こういう商品です」くらいの説明はOK、ということでしょうか。

過去の投稿はどうする?広告表記をしなくていいケースはある?


― 話は変わりますが、10月以降、ステマ法に関する相談は増えていますか?

寺垣:10月と言わず、今年の春先くらいから既存の広告主や代理店からの相談が増えていて、意識が高まった印象はあります。特に多く聞かれる質問としては、「これまでの投稿はどうしたら良いですか?」というものです。昔のものは消さないといけないですか?という。

― インフルエンサーの過去投稿のハイライト掲載などは厄介ですよね。正しい対処法はどのようなものでしょうか。

寺垣:過去の投稿であっても、現在表示されていれば現在の広告ということになりますので、抵触のおそれがあるものは削除するに越したことはないです。

― その他、広告主や代理店、ASP、プラットフォーマーなどそれぞれの立場で具体的に対処すべきことはありますか?

寺垣:難しい話は何もなくて、結論としてはPRなど広告とわかる表記がされているかが重要なので、まずはそこを徹底していくことが大切だと思います。SEOの施策にせよインフルエンサーにせよ、そこからの抜け道を考えようとすることが良くないわけで。

― 広告表記をしなくていい方法があるかどうかはまだどこもわかってない、限界事例が出ていないということですよね。

寺垣:アフィリエイトの場合はもう完全に広告なので、つけないという選択肢はないですね。生の口コミにはなり得ないので。

― ステマ規制に関してはまずはインフルエンサーとかSNSの投稿に対するものが中心だと考えていたのでそこは対策を進めていたんですが、業界的には9月のタイミングでSEOで上がっているサイトに対しても全部PR表記をしないといけないということになって、10月以降対応を進めています。インフルエンサー以外はどうするべきなのかというのがまだはっきりしていないと思っています。

寺垣:これは結論、サイト運営者のところに会社名とか広告主との関係が書いてあればいいんです。けっこうよく聞かれるところなんですけど、法律に立ち返ると「一般消費者が事業者であることを判別することが困難である表示」なので、SEOについても事業者が分かればいいということですね。

― 運営者が広告主でなくても、運営者の名前だけがあればいいんですか?

寺垣:いや、広告主でない場合でも、広告であることがわからないとダメですね。個人名みたいな名前しかないのは良くないです。例えば「〇〇広告エージェンシー」みたいな企業名なら、広告代理店であることが自明なのでじゃあこれは広告だなとわかるわけです。

― では例えば弊社で記事を作ったとして、ユーザさんが入ってきたときにわかりやすく広告だと表示されていればいいけれど、ページのずっと下まで行って別のページを見るまでわからないようにする、とかだとダメなんですね。

寺垣:そうですね、一般消費者から見て、全体としてどう思うかですね。「広告だとわかる」なら問題ないですが、「広告かどうかわからない」だとダメです。

― 既存の取引先様からの相談として、SNS以外にアフィリエイトそのものをどうしたらいいかというお話はありますか?

寺垣:アフィリエイトは、掲載面によっては広告であることが明らかなので、そういう場合は問題ないんです。口コミサイト、記事広告、ランキングサイトについては広告表記をつけたほうが良いでしょうね。

― これまでPR表記が必要なかったSEO媒体でも、口コミに見えるようなものはつけたほうが良いということですね。

ステマ規制で摘発に至るルートは?


― もうひとつお聞きしたいのですが、もしステマ法に抵触するケースがあった場合、どのようなルートから発覚すると考えられるでしょうか?

寺垣:考えられるのは、いち消費者からの指摘よりは内部通報や競合他社からの指摘でしょうか。薬機法であれば、掲載面を見れば法律に抵触する表現かどうかはひと目でわかるんですが、ステマ法はPR表記がない投稿や記事が広告かどうかは判断しづらいですよね。逆に言うと、外部から広告とわかるものは事業者の表示であることが明らかなのでステマ法には抵触しないです。内情を知っているところからの報告が信憑性が高いといえそうです。
まあ薬機法も、競合他社からの指摘で調査が始まるケースも多いんですが。

― そうだろうなとは思っていましたが、改めて聞くと怖い情報ですね。だからこそ、しっかりとルールを遵守するのが一番大切ということですね。

最後に、今回のステマ規制に対してLOGRIZaがどんな役割を果たせるか、寺垣さんのご意見をお伺いできますか。

寺垣:先ほども触れましたが、アフィリエイトの場合は明らかに広告だとわかるような掲載面もあれば、一見すると口コミのような広告と分かりづらい掲載面もありますよね。後者のほうにはちゃんとPRなり広告であることの表記が必須なので、そうした表記をこっそり外していないかどうかLOGRIZaでモニタリングしていくというのは有効だと思いますね。競合他社から「この記事口コミっぽく見えますけど実は広告ですよ」というタレコミをされないとも限らないですし、広告主の故意でなくてもアフィリエイターさんが勝手にやったことで広告主が摘発される可能性もありますから。景表法なら逮捕はないですが、薬機法は逮捕される恐れがあるので、知らなかったでは済まされないんです。
商材が売れれば売れるほど競合に目をつけられることも増えますから、ある程度、たとえば月間200〜300万円の売上があるのであればリーガルコストと考えても良いのではないかと思います。

― ありがとうございます。PR表記は数字や実験データのような表記ではないので摘発もされづらいようにも思いますが。

寺垣:そうですね。やっぱり内部告発か、アフィリエイトリンクがついてるのに口コミを装っている、というのが最初に摘発されるのではないかと思います。

― そうするとやはり、競合から告発されることが多い現状、広告主が知らなかったでは済まされないケースも多いので、リスクヘッジとしてLOGRIZaを導入して監視は常にしていく価値があるということでしょうか。

寺垣:そうですね、売上を今後も伸ばしていくために、現在の売上に対する一定割合を使って安心できる対策をしていくということかと思います。

― 行政の指摘は1年前とかまで遡ったりしますし、LOGRIZaは13ヶ月前までのデータを蓄積しておけるので、導入するなら早いほうがいいです、というのは僕らもお伝えしているところではあります。

本日はお時間いただきましてありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。

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